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優しい空白 

自由は不自由を感じることで、はじめて成立する。

飛べる空は限られているから
風の心地よさを感じる。

宇宙の構造なんて知らなくても
夜空を彩る光りが何よりも
綺麗だということを知っている。

緩やかな鎖に繋がれて
見渡せる世界の領域こそが
この世界の全てだった。

けれど、そんな世界の色彩は
歳月を重ねるにつれて
目眩がするほど、明るくなって
知りすぎるほど、窮屈になって

空白だけが愛しさを持つようになった。
空白だけが優しさを持つようになった。

人生の中で様々に色づいた色彩を
また空白へと戻す作業。

この世界で美しいものは空白だけだった・・。




理由 

理由が必要になった。

何をするにも
理由が必要になった。

「生きること」にも、理由を探した。
「悲しむこと」にも、理由を探した。

心ではなく、思考で生きていた。
心は何も、導いてはくれなかった。

「未来」にも、理由を探した。
「今」にも、理由を探した。

「他者を信じること」にも、理由を探した。
「他者を愛すること」にも、理由を探した。

「笑顔」ひとつ作るのも、理由を探した。
「涙」ひとつ流すのにも、理由を探した。

「死ぬこと」にも、理由を探した。

何をするにも
理由が必要になった。

答えなどないものばかりを
追いかけていた。

ただ、「詩を書く」理由は
分かっていた。

それが「愚かな自分を自分で確かめるため」
だと言うことを
僕は分かっていた。



月の揺らめき 

浅い月の揺らめき。

望まれないものばかりの
満たされないものばかりの

朝ではない時。

昼でもない時。

手の平いっぱいに転がるのは
愛と悦び以外の感情。

何億何兆の星がある中で
月だけが輝いている空。

こぼれる溜息を
風は吹き荒れるままさらっていく。

向かうべき場所などない。
生も死も廃れた選択肢ばかり。

涙を拭いた指先で
月の円形をなぞっていた。

けして、光に包まれることなどない夜の中で
月は揺らめきながら何を想う?






死を想い 

死を想っていました。

世界の外側の光は
天体なのか、天国の灯りなのか。

それらは
どんな表情で地上を照らしているのだろうか。

満たされない想いを
独奏し続けるのは月か、誰か。

いじわるな指先で
切りつけた血の色は
けして「死」ではなかったね。

心を捨て去ることは出来ない、と
それは語っている。

死を想っていました。

風景の一部であったものが
ある瞬間に世界から消えていく。

僕は、誰かの風景の一部で在ったのだろうか。

僕は、世界の一部で在ったのだろうか。

それすらも不確かな
存在という悲しい証明。

世界の外側の光は
天体なのか、天国の灯りなのか。




孤独 

生きるという孤独があって
死ぬという孤独があって

どちらの孤独も
はかりに掛ける事など出来ないほどに
寂しいものだけれど

この世界の中でそれら「孤独」を
感じないでいられる場所など
存在しないということを
あなたは知っているかい?

長い眠りから覚めたように
僕は受け入れるべき「孤独」を
探していた。



言葉 

言葉は僕が出会った最初の表現で
言葉は僕が出会った最初の世界で
言葉は僕が出会った最初の繋がりで

スキップの仕方を覚えるずっと前から
自転車の乗り方を覚えるずっと前から
算数の数式を覚えるずっと前から
タバコの吸い方を覚えるずっと前から

言葉は周りに在って
言葉は沢山のものを与えてくれて
心が成長していく中で
それは様々に形や色を変えていったけれど
その言葉のはじまりは
あまりにも綺麗で

言葉は僕が出会った最初の優しさで
言葉は僕が出会った最初の悦びで
言葉は僕が出会った最初の愛で

はじまりの言葉は
あんなにも綺麗だったのに

歪んだ言葉しか思い浮かばない今は
悲しみしか語れない今は

変わってしまった言葉たちを想って
ただ、涙を流すしかなかった。

ゴミ屑のように
散らかるだけの言葉を抱いて

今日ほど愛を詠いたいと
願った日はなかった。

今日ほど愛を詠いたいと
願った日はなかった。



夜の夢 

温かな微風が告げる季節は
静かな眠りへと誘い込む。

星屑が永遠ではない輝きで
一夜の夢を照らしている。

ただ、ただ、優しい朝を願った日々が
追憶の中で揺らめいては
僕は心の傷跡を数えています。

やがてカゴの中の鳥も気付くだろう。
もう焦がれた大空を
飛ぶ必要など無いんだ、と。

毎晩のように
遠吠えを繰り返すだけの犬も気付くだろう。
月の光に
悲しみを詠う必要もないんだ、と。

全ては静かな夜の安らかな夢の後に。